糖尿病網膜症
糖尿病網膜症について
糖尿病の合併症のうち、目に起こるものの中で最も重要なものが糖尿病網膜症です。悪化してしまうと治りにくく、しばしば失明の原因となるからです。現在日本において、年間3000人の人が糖尿病が原因で失明しており、緑内障とならび、中途失明の原因の一、二位を争うものです。
糖尿病にかかってもすぐに糖尿病網膜症になるとは限りません。およそ10年後に1/4の人が、15年後には半数の人が網膜症になるといわれています。糖尿病にかかると、血液中の糖分を体の細胞がうまく吸収・消費できなくなります。血液中の糖分が多い状態が続くと、やがて糖が血管に障害を与えるようになります。目の網膜にある血管は細いので特に障害を受けやすく、血管がつまったり、出血したり、血液の水分が外へ漏れ出て網膜の急所にむくみをつくったりします。このむくみは比較的早期から出ることもあります。
もともとある血管が障害を受けて機能しなくなると、酸素や栄養分を届けられなくなるため、急場しのぎに急ごしらえの新しい血管(新生血管)が作られます。この血管はにわか作りのためとてももろく、出血や血液の成分の漏れをたびたび起こします。
これらの状態が、視力の低下などの症状の原因になります。糖尿病網膜症の厄介なところは、病気は進行しているのに自覚症状がなかなか現れないことです。それだけに、病気が発見されるのも遅れ、気づいた時にはかなり重症になっていることも少なくありません。病気が進行すると、網膜剥離や緑内障といった病気を合併し、失明に至ることもあります。
早期の場合は血糖のコントロールのみで改善することもありますが、病状に応じて、レーザー光線で網膜を焼いたり、新生血管やむくみを抑える薬を目の中に注射したり、手術で出血等を取り除いたりする治療が行われます。